最大の見所は、約60年に及ぶキャリアの主要な出来事を、パコ自身が具体的かつ詳細に回想し、総括している点。食べ物に事欠くほどの貧しさから、7歳のギター人生は始まった。創作に目覚めたサビーカスの助言。「メシアの出現だった」と述懐するカマロンとの邂逅。「二筋の川」の大ヒット。ギタートリオで苦しみ、開眼したジャズとの共演。セクステット結成、そして解散。遺作「カンシオン・アンダルーサ」(2014)への挑戦、「俺たち(ギタリスト)は独りで暮らさねば」といった人生哲学まで率直に語る。「速弾きなのに、深い」(カルロス・サンタナ)、「フラメンコに収まりきらない巨人」(チック・コリア)、晩年のツアーで踊ったファルーが明かす「メトロノーム特訓」や、「私にはビッグバンだった」というエストレージャ・モレンテが目撃したパコの涙など、共演スターのエピソード全てが興味深い。ゴマ塩の不精髭に眼鏡を掛け、猫背でモニターに向かいミキシングに熱中するパコ。そこには“神”ではない、ただ純粋に音楽を愛し続けた男がいた。十八番のルンバで名場面を巡るラストシーンは、地中海の夕陽のようにまぶしく、一つの時代が終わったことを実感する。ファンなら一生の宝となる傑作。英語字幕、ベスト盤CD2枚(全29曲)付き。